第88章

新藤鈴奈は、彼の態度に少しうんざりしていた。

もともと神園和臣はいま機嫌が悪く、彼女に当たっている。そこへ稲垣征也まであれこれと邪魔をしてくるなんて、火に油を注いでいるようなものだ。

――そう思って反応するより早く、先に動いたのは神園和臣だった。

和臣は稲垣征也の手首をがしっと掴み、そのまま押しのける。新藤鈴奈の前へ身体を滑り込ませるように立ち、低い声で言い放った。

「話すなら話せ。いちいち手ぇ出すな。鈴奈はいま、俺の婚約者だ」

神園和臣のプロポーズは大々的に報じられていた。稲垣征也がどれほど世間に無関心でも、その程度は知っている。

だからこそ、余計に腹が立った。

神園和臣が、...

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