第92章

稲垣征也はきっちりとしたスーツ姿で、落ち着いた顔のまま二人の前まで歩み寄ってきた。

驚いた視線を受けても動じず、淡々と説明する。

「鈴奈の言うこと、もっともだと思ってね。父親としての責任を果たそうと思った。だから急ぎの仕事を片づけて、日織の保護者会に付き添うことにしたんだ」

神園和臣の胸の奥が、むっとする。

今日、鈴奈を送ってきたからこそ気づいた。

稲垣征也の手口に。

あの日の電話だって、もしかしたら――征也が日織にかけさせたんじゃないか。

鈴奈の情に訴えて、保護者会に一緒に行く口実を作り、距離を詰めるために。

腹の底では不満が渦巻いているのに、和臣は鈴奈の代わりに何か言うこ...

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