第93章

稲垣征也は津田真由の姿を認めた瞬間、反射的に新藤鈴奈へ視線を走らせた。胸の奥でざわつく苛立ちを押し込み、低い声で言う。

「……どうして来た」

せっかく、ようやく――あいつをここまで連れてきたのに。

「日織ちゃんのお母さまがいらっしゃいましたよ」

担任が外からにこやかに入ってくるなり、津田真由を見つけて朗らかに声をかけた。

津田真由は担任に軽く会釈し、それからまた鈴奈をちらりと見て、怯えたように視線を落とす。

「ごめんなさい、征也。今日、鈴奈が来るなんて知らなくて……先生から個別に連絡をいただいて、保護者会だって聞いたから……それで……」

そこで稲垣征也は思い出す。普段、保護者会...

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