第96章

怒りを露わにする稲垣征也を見て、新藤鈴奈はふと思い出したように眉をひそめた。

「……その顔の傷、和臣とやり合ったの?」

「ほかに誰がいる」

稲垣征也は顔を沈める。

昨日のあいつは、まるで狂ったみたいだった。真夜中に稲垣家へ押しかけてきて、いきなり拳を叩き込んできたのだ。

反射的に応戦できなければ、ただ殴られ損だっただろう。

ところが鈴奈は、鼻で笑って吐き捨てた。

「自業自得」

稲垣征也は思わず目を見開いた。信じられないものを見るような視線が、鈴奈に刺さる。

鈴奈は腕を組み、挑むように眉を上げる。

「謝らなくていい。昨日、私の婚約者が代わりにスッキリさせてくれたし、私ももう...

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