第98章

個室のドアを開けた瞬間、むわっと鼻を刺す酒の匂いが押し寄せた。

薄暗い照明の中で、新藤鈴奈は一目で神園和臣を見つける。

――どれだけ飲んだの。

「新藤さん、ですよね?」

含み笑いの声が、鈴奈の思考を断ち切った。

鈴奈が視線を上げると、個室には見知らぬ男が三人いた。ひとりは氷みたいに冷たい顔。ひとりは穏やかで品のある雰囲気。そしてもうひとりは、にこにこと人当たりのよさそうな笑顔を浮かべている。

声をかけてきたのは、その朗らかな男だった。

鈴奈は礼儀として口元だけ笑う。

「はじめまして。和臣の……婚約者の新藤鈴奈です」

婚約者と言っても、正式な儀式をしたわけじゃない。和臣が彼ら...

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