第十章

遥は少し躊躇った。

 

「……でも、おばあちゃんが、嫌な顔する」

 

か細い声で、俯きながら呟く。当たり前のことのように、けれど、どこか遠慮がちに。

 

紗夜はその様子を見つめた。「どうしておばあちゃんが嫌な顔をするの?」

 

遥はすぐには答えなかった。指先で服の裾をそっと摘まみ、少し考えてから、ぽつりぽつりと話し始める。

 

「おばあちゃんがね、弟は男の子だから、譲ってあげなさいって。遥が譲らないと、おばあちゃん、怒るの」

 

「そういうこと、よくあるの?」

 

「うーんとね……」遥は言葉を切った。「この前、弟が遥のプリンを食べたいって言った時、あげなかったら、おばあちゃんに『お部屋で壁に向...

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