第十四章

瑞樹の言葉は、細い針のように紗夜の心を的確に抉った。

 

息子が呼んだ「ママ」は、絵里に向けられたものだった。

 

その声に含まれた弾むような期待は、紗夜が瑞樹の口から一度も聞いたことのない響きをしていた。そして今、自分に向けられる失望と嫌悪が入り混じった眼差しが、残酷なまでの対比を描き出す。

 

紗夜は伏せた睫毛の下で、喉の奥に鈍い痛みが広がるのを感じた。

 

六年間、彼が何を食べるとアレルギーを起こすのか、夜中に熱を出せばどの病院へ連れて行くべきか、むずかって泣くたびに本当は何を求めているのか、彼女はすべてを覚えていた。些細すぎて語るに値しないような記憶の積み重ね。それが丸六年もあったとい...

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