第二十二章

黒沢辰の言葉が落ち、ラボラトリーは一瞬の静寂に包まれた。

 

紗夜は彼の方を見なかった。

 

彼女は俯き、手元のタブレットを操作台に戻した。その動作は落ち着き払っており、たった今の言葉などまるで聞こえなかったかのようだ。

 

沈黙が三秒ほど続いた。

 

彼女は顔を上げ、黒沢辰へと視線を向ける。その表情は、凪いだ水面のように穏やかだった。

 

「黒沢様が担当者の経歴にご懸念がおありでしたら」彼女の声は平坦で、どこか職業的な冷ややかさを帯びていた。「他の者にご説明させますが」

 

黒沢の眼差しが、わずかに鋭さを増す。彼女がこのような反応を示すとは、予想外だった。狼狽でもなければ、弱さを見せるわけで...

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