第二十七章

藤原司が他の客に呼ばれて話している間、紗夜は一人、宴会場の隅に立っていた。

 

辰がずかずかと歩み寄り、彼女の手首を掴むと、より人目につかない隅へと引っぱっていく。

 

ぐっと引かれ、紗夜は前によろめいた。とっさに振りほどこうとするが、辰の力は強い。

 

周囲の客たちの視線が突き刺さり、ひそひそ話がまた広がり始めた。

 

辰はそんな視線を意にも介さず、彼女を宴会場の隅まで連れて行くと、ぴたりと足を止めた。

 

彼は彼女を見下ろし、低く抑えた声で問う。

 

「これで満足か?」

 

紗夜は訝しげに彼を見上げた。「何のこと?」

 

「周りの連中が何を言っているか、聞こえているだろう」辰の顎のラインが...

ログインして続きを読む