第三十二章

瑞樹の泣き声がまだ響く中、その姿はすでに子供部屋から消えていた。

 

辰は廊下の方へ半歩踏み出したが、ぴたりと足を止める。

 

紗夜は遥の手を引き、無表情のまま彼のそばを通り過ぎていく。

 

辰の視線が彼女の背中に注がれる。しばしの沈黙の後、彼は追ってくることはなかった。

 

やがて、紗夜の背後でドアが閉まる。

 

路上の風は、少し肌寒い。

 

紗夜の隣を歩く遥は、ずっと彼女の顔を心配そうに見上げている。その瞳には、溢れんばかりの不安が浮かんでいた。瑞樹の言葉を紗夜が気にしてしまうのではないか、そして、自分が何か悪いことをしてしまったのではないか、と。そんな不安が入り混じっているのだろう。

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