第三十八章

電話の向こうの沈黙は、一秒にも満たなかった。

 

「落ち着いて」彼の声は、ひどく穏やかだった。「コンビニか、マンションのエントランスで待ってて。遥ちゃんを風に当てないように。すぐ行くから」

 

電話はそこで切れた。

 

紗夜はエントランスへと戻り、遥をさらに強く抱きしめる。遥の額が、紗夜の首筋にぐったりと寄りかかっていた。焼けるように熱い。

 

十分も経たないうちに。

 

一台の黒いセダンが、エントランスの前でキーッと音を立てて急停車した。

 

運転席のドアが開き、藤原司が車の前を回り込んで後部座席のドアを開ける。余計なことは何も言わず、ただ身を引いて、彼女たちが乗り込むためのスペースを作った...

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