第三十九章

黒沢辰はスマホを受け取り、写真を拡大した。

 

その表情こそ変わらなかったが、指の動きが一瞬だけ、ぴたりと止まる。

 

(これで、あの二人は確実に離婚するわ)

 

白石絵里は心の中でほくそ笑んだ。

 

辰は絵里にスマホを返すと、音もなくノートパソコンを閉じ、静かに立ち上がった。

 

「辰さん、どこへ行くの?私も一緒に——」

 

絵里が思わず立ち上がると、辰は冷ややかにそれを制した。

 

「お前はここにいろ。俺は病院へ、遥の様子を見に行く」

 

その声は穏やかでありながら、一切の反論を許さない響きを持っていた。

 

「遥は、お前のことが嫌いだからな」

 

その一言が、絵里の喉の奥に突き刺さる。

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