第四十章

紗夜は動かず、ただ顔を上げて辰の目を見つめた。

 

「客観的に見て」と彼女は言った。「親権者として、あなたの方が不適格です。同様に、私にもあなたの要求を拒否する権利があります」

 

「黒沢さん」

 

窓辺から、藤原司の落ち着いた声がした。

 

「あまり無茶を言わないでいただきたい」

 

辰は横顔を向け、その視線を一秒だけ彼に留めたが、何も言わなかった。

 

三人の大人の間に張り詰めた空気が、病室に満ちる。

 

その時、ベッドの上で何かが動いた。

 

か細く、どこか夢うつつな声。

 

「……パパ?」

 

遥が目を開けた。数回まばたきをすると、まだ覚醒しきらないぼんやりとした瞳で、ベッドのそばに屈...

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