第四十四章

紗夜の言葉に、黒沢辰は黙り込んだ。

 

藤原司はそっと身を寄せ、遥の耳をその大きな手のひらで優しく覆う。

 

そして、彼女に顔を近づけ、穏やかな、それでいて抑制の効いた声で囁いた。

 

「ほら、お子さんの前でそういう話は、いかがなものでしょうか」

 

辰は彼をちらりと一瞥する。

 

その視線は、遥の耳を塞ぐ手に二秒ほど留まり、すっと逸らされた。

 

「藤原」。声が一段、低くなる。「あんたは何様のつもりだ。俺の家のことに口を出すな」

 

廊下のセンサーライトがまだ灯っており、辰の表情をはっきりと照らし出している。それは単なる怒りというよりは、行き場のない何かが捌け口を見つけ、外に飛び出そうと必死...

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