第五十章

後悔?

 

そんなもの、あるはずもなかった。

 

紗夜にとって、これは人生で最も正しい決断だったのである。

 

もう六年も無駄にしてきたのだ。これ以上、時間を浪費し続けるつもりはない。

 

それに、遥にもっと良い生活環境を与えてあげたい。以前黒沢の家では、いつも姑と顔を合わせるせいで、遥の性格はどこか敏感になってしまった。

 

ただ遥に、誰の顔色を窺うこともなく、のびのびと笑って成長してほしい。それだけが紗夜の願いだった。

 

紗夜の顔には、決然とした意志が浮かんでいた。それを見た黒沢辰は、怒りに任せて踵を返し、その場を去って行った。

 

あの女、まだ離婚を盾に俺を脅すつもりか。黒沢家のすべて...

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