第五十七章

「落ち着け」藤原司は両手を挙げ、低く、それでいて落ち着いた声で言った。「今あの子を放せば、まだやり直せる」

 

「やり直せるだと?ここまで来ちまった俺に、何の道が残ってるってんだ!」

 

紗夜は入り口で立ち止まり、まだ整わない息のまま、周囲の状況を素早く見渡した。

 

袋小路の突き当たり、三方は壁。

 

男にはもう、逃げ場はなかった。

 

「他の子たちはどこ?」

 

その声は、自分でも驚くほど穏やかに響いた。

 

男は答えず、視線を彼女と藤原司の間で彷徨わせる。だが、ナイフの刃は一層強く押し付けられ、少年の首筋に浅い赤い筋がじわりと浮かび上がった。

 

紗夜の視線がその赤い筋に落ち、心がずしり...

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