第七十六章

司が言い終えると、電話の向こうが一瞬、静まり返った。

 

紗夜は窓際に立ち尽くしたまま、言葉を返せずにいた。

 

彼の口から出たその言葉は、あまりにも場違いに響いた。

 

「……あなたは私の上司です」ようやく口を開いた彼女の声は、少し低くなっていた。「私たちの関係は、もともと——」

 

「あの車はな」司は彼女の言葉を遮った。その声にはどこか気だるさが混じっている。「俺にしてみりゃ、コンビニでガチャを回すようなもんだ。お前は気にすんな」

 

紗夜は口を半開きにしたが、何も言えなかった。

 

彼のたった一言が、この半晩かけて固めてきた決心を、いともたやすく粉々に打ち砕いていく。

 

「ついでに言っ...

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