第八十四章

コーヒーを手に、紗夜は一瞬動きを止めた。

 

自分の姿を見下ろす。同じシャツ、同じ髪型、口紅の色さえ変えていない。

 

どこが違うというのか、さっぱり見当がつかなかった。

 

彼女が不思議そうな顔をしているのを見て、藤原司がからかうように言った。

 

「信じられないって顔だな」

 

「……なんだかお世辞に聞こえます」紗夜は遠回しな言い方をせず、率直に答えた。「昨日、サーキットで少し走ったので、そのせいかもしれません」

 

「へえ、サーキットか」司は顎に手を当て、気だるげな口調で言った。「俺も昔何度か試したけど、続かなかったな」

 

「どうしてです?」

 

「コーナリングで首が持たなくてさ。頭ご...

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