第九十章

奥の部屋から、小さな足音が聞こえてきた。

遥だった。

目をこすりながら、スリッパを履いてぱたぱたと駆けてくる。小さな顔にはまだ眠気が残っている。

司の手に巻かれたガーゼを見ると、遥の小さな顔がくしゃりと歪んだ。

「怪我したの?」遥はそばに駆け寄り、心配そうな瞳で尋ねる。「痛い?」

司が答えるより先に、遥はもうその場にしゃがみ込んでいた。

紗夜がさっきしたように、司の前に屈み込むと、傷口に顔を近づけ、そっと息を吹きかける。その表情は、ひどく真剣そのものだった。

「ふーふーしたら痛いの飛んでくの。おばあちゃんが教えてくれたんだ」

そして顔を上げ、きらきらした瞳で問いかける。

「司...

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