第九十一章

紗夜の左隣に立つ翔真は、垂らした手を固く握りしめていた。その指の関節が、静かに白く浮かび上がる。

声は発しなかった。

だが、彼の心は目の前の子供を冷静に見定めていた――紗夜が産んだ子であるはずなのに、その瞳には、この歳の子が浮かべるべきではない冷淡さが宿っている。

その冷淡さは、後天的なものだ。

誰かに、少しずつ、植え付けられたもの。

翔真は遥のことを思い出した。

同じ母親から生まれたというのに、まったく違う眼差し。

翔真は心の中でため息をついた。

一人の子供がここまで歪められてしまうとは、一体誰の怠慢なのか。

辰は瑞樹の動きには構わず、その目は深く、ただ一点、紗夜だけに注が...

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