第九十二章

トレーニング開始時刻から、すでに三十分近くが経過していた。

紗夜は腕時計に目を落とし、顔を曇らせる。

レース前の一分一秒も無駄にはできない。後で数周多く走り込んで、感覚を取り戻さなければ。

彼女は隣にいた翔真の腕を引き、歩きながら言った。「私たちは先にトレーニングを始めるわ」

すると瑞樹が前方に立ちはだかり、彼女を斜めに見据える。その声には、年齢にそぐわない冷淡さと軽蔑が滲んでいた。「トレーニング? ママ、だんだん様になってきたじゃない。ここにいるのは国内トップクラスのレーサーばかりなんだよ。ただの主婦が、トレーニングなんかするの?」

翔真は瞬時に拳を握りしめ、指の関節が白くなる。

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