第九十五章

授賞式会場は、なおも格式張った静寂に支配されていた。

絵里の顔色が変わった。

彼女の視線が泳ぎ始め、不自然に通路の向こう側へと彷徨う。

紗夜は彼女を見据え、落ち着いてはいるが、確信に満ちた口調で言った。「白石さん、私に謝ってください」

辰はその場に座ったまま、何の表情も浮かべていない。

口を開くでもなく、身じろぎもせず、視線は前方の虚空の一点に注がれている。

絵里は二秒ほど待ったが、誰からの助け舟もなかった。

彼女は視線を戻し、再び紗夜に向き直った。

「……こんなに広い会場で、隣に座っていただけで——」彼女は声を整え、僅かに被害者を装うような響きを帯びさせた。「私のせいだとおっ...

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