第九十七章

辰は彼の前にしゃがみ込んだ。表情は穏やかだったが、眉間には気づかれないほどの僅かな皺が寄っていた。

今朝、確かに主催者側へ連絡を入れた。

返答は明確だった――暁影は出席確定だと。

ホール全体を、一度ならず見渡した。

だが、その姿はどこにもない。どこにいるのか、彼にも分からなかった。

星月夜レーシングのこのドライバーに対するガードの固さは、不可解なほどだった。

ネット上には個人情報が一切なく、鮮明な正面写真一枚すらない。

唯一確かなのは、性別が女性であるということだけ。

それ以外は、すべてが空白だった。

辰は顔を上げ、瑞樹に言った。

「もう少し奥を探してみるぞ」

彼の右側から...

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