第10章 離婚しましょう

玄関先の気配に気づいたのか、渡辺莉々が振り返った。渡辺美咲の姿を認めた瞬間、その顔に驚いたような、それでいてやけに優しい笑みが浮かぶ。

 彼女はあわてて立ち上がり、美咲のために場所を空けた。

「美咲、やっと帰ってきてくれたのね。やっぱり康介のこと、放っておけなかったんでしょう?」

 そう言うなり、足早に美咲の前まで来て、その手を取ろうとする。

「康介、熱がひどくて……私一人じゃ少し心細かったの。戻ってきてくれてよかった。ね、一緒に看てあげよう?」

 最後まで言い切る前に、渡辺美咲はまるで彼女の手のぬくもりにでも焼かれたかのように、ばっとその手を振り払った。

 目は凍るほど冷たい。...

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