第101章 門前払い

渡辺美咲がホテルにチェックインし、ちょうど大きなベッドに身を沈めた頃――田中康介は、彼女が借りているマンションに到着していた。

道中の移動で皺の寄ったスーツのシャツを軽く整え、呼吸をひとつ。気持ちを切り替えてから、指先でそっとドアを叩く。

「美咲、いるか?」

……返事はない。

もう一度。もう一度。

それでも、部屋の奥からは物音ひとつ返ってこなかった。

田中康介の胸の奥に、じわりと嫌な予感が染みる。ドアに向けて声を張った。

「美咲!」

……沈黙。

諦めきれずに叩き、呼び、覗き込むように耳を澄ませる。それでも反応はない。

(留守なだけだよな。まさか……幽霊ってわけでもないだろ...

ログインして続きを読む