第108章 田中康介、お前には本当に吐き気がする

田中康介と渡辺莉々が親しいことは前から知っていた。けれど確かな証拠があったわけじゃない――そう思い込むことで、渡辺美咲は見て見ぬふりができていた。

それどころか、もう自分が身を引くと決めたあとになって、康介のほうが離婚に首を縦に振らなかったのだ。

それなのに、今は――。

渡辺美咲の胃の奥が、ぐらりとひっくり返る。彼女は廊下のトイレへ駆け込み、洗面台に身を折って乾いたえづきを漏らした。白い陶器は氷みたいに冷たい。縁に手をつく指先が、みるみる白くなる。

脳裏に浮かぶのは、康介と莉々が並ぶ光景。ひとつひとつが刃物のように、皮膚の内側を削っていく。

どれくらいそうしていたのか。ようやく顔を...

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