第109章

オフィスのドアがコン、コンと二度鳴った。佐々木が顔だけ覗かせる。

「田中さん……まだ、続けますか?」

田中康介はスマホをしまい、表情を何度か切り替えた末、短く言った。

「……待つ。続けて待つ」

佐々木は社長のやつれた横顔を見て、何も言わずにドアを閉めた。

救急科のアラームが鳴り響いたのは、渡辺美咲がようやく手術台を降りた直後だった。

血のついたスクラブを脱ぐ暇もない。走ってきた看護師の足音と声が、そのまま飛び込んでくる。

「渡辺先生! 飛び降り自殺の妊婦さんが搬送されます! 妊娠7か月、多発骨折、状態かなり危険です!」

美咲は反射で駆け出した。救急棟へ向けて廊下を走り、角を曲...

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