第110章

田中康介が救急科から一般病棟へ移った翌日、渡辺美咲は彼に介護士を手配した。彼女が望んでそうしたわけではない。ほかに片づけなければならない用事があったからだ。

田中康介はテーブルに整然と並べられた入院用品を見て、それからドア口に立つ渡辺美咲へ視線を移した。声はまだ弱い。

「美咲、俺、介護士なんていらない」

「必要よ」

渡辺美咲の口調に、交渉の余地はなかった。

「私は仕事がある。介護士さんなら、あなたの身の回りのことを手伝える。長時間の付き添いは、素人がやるものじゃない」

田中康介は数秒黙ってから、ぽつりと聞いた。

「……じゃあ、お前は?」

「会いに来る」

渡辺美咲はそう言って...

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