第116章 アリスの身の上

その夜、渡辺美咲は一連のことをセレナに話した。セレナはしばらく黙り込み、ようやく口を開く。

「アリスはね、実の父親のことを人前で話したことがないの。あなたが初めてよ」

そう言って顔を上げ、渡辺美咲をまっすぐ見た。

「美咲、知ってる? 兄がアリスを引き取った時、あの子はまだ1歳ちょっとだった。兄だって、まだ二十代の前半。子どもを連れて戦場を転々として……何年も、よ。どれだけ大変だったか、想像できる?」

渡辺美咲は、何も言えなかった。

「だから、兄があなたを好きになれないって言うなら……それは分かる。でもね、『あの人は駄目な人だ』って言うのは違う」

セレナは小さく首を振る。

「兄は...

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