第117章 三つ子の魂百まで

「……うん」

渡辺美咲は短く返したものの、箸には手を伸ばさなかった。

卓上の料理に目を落とし、次に田中康介へ視線を移す。

「気を遣ってくれてありがとう。でも、もう食べたから。あなたが食べて」

踵を返した瞬間、田中康介が慌てて身を起こして止めようとし――傷に触れたのか、喉の奥で「……っ」と鈍い声を漏らした。

渡辺美咲の足が止まる。

振り返ると、額に冷や汗が滲んでいる。

沈黙、三秒。

結局、彼女は引き返して椅子に腰を下ろした。

「……10分だけ。食べ終わったら、すぐ出るから」

今日一日、渡辺美咲は本当に疲れていた。

そして、本当に空腹だった。

彼女が黙々と口に運ぶのを見て...

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