第122章 どさくさに紛れて

今度ばかりは、渡辺莉々も本気で頭にきていた。だが同時に、打つ手もない。

ぎり、と奥歯を噛みしめ、捨て台詞みたいな脅しを残して、くるりと踵を返すと病室へ戻った。

「覚えてなさいよ。私が出たら、康介に言ってあんたたち全員クビにしてやる!」

病室に入っても、もうベッドに横になる気分にはなれなかった。

床まで届く窓の前に立ち、落ち着きなく行ったり来たりする。

渡辺莉々が苛立ちを抱えたまま病室を歩き回っている頃、同じフロアの別室――オフィスでは、ボディーガードの一人が田中康介へ電話を入れていた。

「田中社長、渡辺さんが本日も騒ぎました。面会を要求しており、ここ数日より感情が激しく……警察に...

ログインして続きを読む