第135章 裏表のある人間

だが、渡辺莉々は田中康介の背後に立っていたため、彼の目には入らなかった。

田中康介はしばらく田中健人に付き添った。

その間も渡辺莉々は父子のそばに張りつき、あれこれ世話を焼く素振りを見せていた。けれど今の田中健人は、もう彼女に近づこうとしない。

まだ幼くて、渡辺莉々の本性まで見抜けるわけではない。だが、誰かがいる時と二人きりの時で態度が違うこと、切り替えがあまりにも早いことは、子どもなりに怖かったのだろう。だからこそ、いっそう田中康介にべったりになった。

とはいえ田中康介にも仕事がある。いつまでも相手をしていられるはずがない。

「健人、いい子だから。いったん降りて。パパ、仕事片づけ...

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