第139章 仲睦まじい夫婦

道中は何事もなかった。せいぜい、田中健人が田中康介と渡辺美咲のあいだを、ときどき盗み見していたくらいだ。

それから、ふっと俯いては忍び笑い。いったい何を考えているのか。

渡辺美咲はその小さな仕草をすべて視界に収めていたが、あえて口にはしなかった。

やがて車を降りる段になり、田中健人はランドセルを背負い、名残惜しそうに渡辺美咲を見上げる。

「ママ、着いたよ」

健人は、今日は渡辺美咲が仕事へ行くついでに、たまたま送ってくれただけだと思っていた。だから校門に着いても駄々をこねず、素直に降りる準備をした――のに。

「健人、待って」

呼び止められて、健人はきょとんとする。

「中まで送る...

ログインして続きを読む