第143章 キャンドルライトディナー

裏で進んでいる思惑など、渡辺美咲は知る由もなかった。

人事部で復職の手続きを済ませたと思ったら、間髪入れずに外来へ回される。

廊下の先まで続く待ち列を見て、美咲は小さく息をついた。

――世の中から病が消えて、薬棚に埃が積もるほど暇になればいいのに。

余計な感傷を胸の奥へ押し込み、ひとりひとりの診察に向き合う。気づけば夜。ようやく手が空き、ちょうど退勤の時間でもあった。

荷物をまとめて帰宅する。

玄関の扉を開けた瞬間、いつもと違う空気に足が止まった。

別荘の中は明らかに「誰かが」気合いを入れて整えている。手の届く角という角には、柔らかなコーナーガード。床には薔薇の花びらが散らされ...

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