第144章 我が家に乾杯

田中康介に手放してもらうなんて、あり得ない。

家族三人がダイニングテーブルを囲む。渡辺美咲の正面に田中康介、その隣に田中健人が座っていた。

田中康介が先にグラスを持ち上げる。

「家族に――乾杯」

その言葉に、美咲は思わず康介を見て、それから健人へ視線を移した。

健人もまた美咲を見つめ返してくる。表情にははっきりとした不安。けれど、その奥に、かすかな期待が滲んでいた。

――こんなに小さいのに、噂や陰口で傷ついてきたんだ。

そう思うと、美咲は結局、康介の言葉を否定できなかった。

静かにグラスを上げる。

その瞬間、康介と美咲、二人の視線が同時に健人へ向いた。

健人は頬をうっすら...

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