第145章 母子の語らい

「健人、謝りたいの」

 田中健人の予想をいい意味で裏切るその一言に、彼は手も足もどこへ置けばいいのか分からなくなった。

「ママ、何言ってるの?」

 信じられない、とでも言いたげに耳のあたりを掻く。聞き間違いじゃないかと確かめるみたいに。

 健人の茫然とした顔を見て、渡辺美咲はまっすぐに言った。

「うん。ちゃんと、あなたに謝らなきゃいけないと思ってる」

「……なんで?」

 ますます分からない。

 健人の中では、美咲は何も悪くないのだ。あのとき「もういらない」みたいなことを言われたって、そのあと放っておかれたって、理解できる部分はあった。

 自分が何をして、どんなひどい言葉を投...

ログインして続きを読む