第152章 向こうから来た女

田中健人がこちらへ向かって歩いてくるのを見て、渡辺美咲はやわらかな笑みを浮かべた。

「ママ! 迎えに来てくれたの!」

ランドセルを背負った健人が小走りで駆け寄り、渡辺美咲の脚にぎゅっと抱きつく。離そうとしても、ぜんぜん離れない。

声は甘く、まだ幼さの残る舌足らずな響き。

渡辺美咲は笑いながら頭を撫で、頬を軽くつまんだ。

「パパ、今日はまだお仕事が少し残ってるの。会社で待ってよう? いい?」

約束していた夕食はある。けれど田中康介の仕事が優先なのも、分かっている。

健人は少しだけしょんぼりしたものの、素直にこくりと頷いた。

「うん。じゃあ行こう、ママ」

母子は今日あった出来事...

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