第153章 新しいスーツ

上野結花は、田中康介が大股で去っていく背中を見送りながら、瞳の奥にかすかな興味を走らせた。

本来、彼女が田中康介に近づいたのは自社のため。

それに、勝手に想像していたのだ。腹の出た中年男で、どこか脂っこいタイプなのだろう、と。

ところが実物は、写真とほとんど変わらない。

上野結花はその場に立ち尽くし、田中康介の背中を三十秒ほど追い続けた。

そして渡辺美咲は、ふと顔を上げるたびに、彼女が呆けたように固まっている様子を目にしていた。

その目に、言葉にできない色がよぎる。

……また一人。

口元がわずかに引きつる。

胸の内がどんな感情なのか、自分でもうまく言い当てられなかった。

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