第160章 エンストする

「もう夜なのに、まだ帰ってこないの? 仕事、忙しいの?」

渡辺美咲の問いかけに、田中康介はようやく手を止め、腕時計に目を落とした。

書類を捌きながら、どこか申し訳なさそうに口を開く。

「うん。今日は会社の用が立て込んでてさ。まだ終わってない。帰るの、たぶんあと1、2時間はかかると思う」

ざっと段取りを頭の中で組み直し、康介は続けた。

「先に食べてて。俺のこと待たなくていい」

美咲は少し考えたあと、拒まなかった。

「分かった。じゃあ、無理しないでね。何かあったら電話して」

「うん」

通話が切れる音がして、康介はスマホを机に置くと、すぐさま書類の山に視線を戻した。

「田中社長...

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