第162章 わだかまり

「すごい!」

「麻友ちゃんがまだここにいたら、きっと喜んだだろうな」

田中健人がふいに麻友のことを口にしたのは、田中康介の褒め言葉を彼女が聞けなかったのが残念だったからだ。

だって、野菜を洗ったのは二人で一緒にやったこと。

なのに褒められているのは、今この場では自分だけ。

「明日、このこと麻友ちゃんに教えてあげようか?」

渡辺美咲は健人の気持ちを察して、そっと頭を撫でた。

「うん!」

田中康介が帰ってくる少し前、麻友の父親が仕事帰りに迎えに来て、彼女は家へ帰っていった。

「じゃあ、麻友ちゃんにもよろしく伝えておいて」

田中康介は笑いながら皿を受け取り、美咲は健人を連れて浴...

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