第163章 私を脅しているのか?

秘書は気を利かせて一礼し、静かに部屋を出ていった。田中康介は控室へ向かい、手早く着替える。

ネクタイを選ぶ段になって、指先が二本の間で一瞬止まった。迷った末に手に取ったのは、以前、渡辺美咲が買ってくれた一本。

結び目をきっちり整え、田中康介は泰然と会場へ戻った。

到着した頃には、チャリティーディナーはすでに始まっている。壇上の出品物を一瞥し、競りの手続きは隣の秘書に一任した。本人はというと、視線を落としてスマホの書類に目を通し、淡々と処理を進める。

オークションが終われば、次はパーティーだ。

田中康介に居残るつもりはなかった。主催者に軽く挨拶を入れ、そのまま帰ろうとした――その時。...

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