第169章 医療トラブル

渡辺美咲は電話を切ると、聴診器を手にして足早に外へ出た。

手術室はすでに整っている。患者情報に目を走らせ、相違がないことを確認して小さく頷く。

「皆さん、お疲れさまです。始めましょう」

手術開始から3時間。モニターの数値が、じわりと――いや、突如として暴れ始めた。

「血圧、保てません――!」

美咲のこめかみを伝った汗がマスクの縁から落ちる。拭う暇もなく、追加の投与量を告げた。

だが患者の身体は、穴の空いた桶みたいに薬を受け止めない。入れても、入れても、抜けていく。

心電図の波形が上下し、緩み、そして――絶望の直線へ。

そこまで、わずか4分。

心肺蘇生を2クール。誰の腕も震え...

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