第61章 彼女は本当に行ってしまったのか?

田中康介は苛立ちまぎれにハンドルをどん、と叩きつけ、胸の奥に重たいものを抱えたまま田中家へ戻った。

車を停めた途端、田中蘭から電話が入る。

「康介、美咲とはどう? 仲直りできたの?」

康介は一瞬、言葉に詰まった。――そうだ。昨日も同じことを聞かれた。

昨日の昼には渡辺美咲に会いに行く、と胸を張って言った。だが昼は仕事で潰れ、午後は渡辺莉々に呼び出されて食事。そこで酒を注がれ、気づけば意識が飛んでいた。

「母さん、今日の昼には行く」

「昨日もそう言ったわよね」

受話器の向こうで、蘭の声が露骨に硬くなる。

「康介、ほんとにちゃんと考えてるの? 美咲が本当にいなくなったら、後悔して...

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