第63章 自惚れ

渡辺莉々は唇を噛み、涙を瞳の縁に溜めた。

「ただ、あなたに悲しんでほしくなかっただけ……。あの人がいなくなれば、あなたにとっても、あの人にとっても、解放になると思ったの。ずっと離婚だって揉めてたじゃない。あの人が出ていけば、もうお互い傷つけ合わなくて済む」

「解放……?」

田中康介の声も、すっと温度を失う。

「渡辺莉々。お前に何の権利があって、俺の代わりに決める。どうして『あいつがいなくなれば解放だ』なんて、お前が勝手に思える」

こちらの動きが止まっている一方で、渡辺美咲の乗った機体は、まもなく着陸態勢に入ろうとしていた。

機内での思いがけない再会を思い出し、美咲の胸には、驚きと...

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