第64章 不在着信

田中康介は何も言わず、ただ渡辺莉々の言葉の続きを聞いていた。

「誰も、理由もなく真夜中にあなたに付き合ってお酒なんて飲まない。友だちが、あなたの子どもの面倒を見る? ましてあなたが撃たれたとき、そばで丸一日一晩ついてる友だちなんて……いないよ」

「それは、お前が勝手に選んだことだ」

田中康介の声は相変わらず落ち着いていた。けれど、その言葉は刃物みたいに、容赦なく渡辺莉々の胸を抉った。

「俺は頼んでない。お前がそうしてくれたからって、友だち以上の感情を持ったこともない。やってくれたことには感謝してる。でも、それは感謝でしかない」

わざと、重く言い切る。

渡辺莉々は一瞬で力を失ったみ...

ログインして続きを読む