第65章 宇田川有沙からの連絡

ケビンはタクシーの脇に立ったまま、笑みを崩さない。渡辺美咲は小さくうなずいた。

「ありがとう。今日は本当に、いろいろと助かったわ」

彼女があまりに丁寧に礼を言うものだから、ケビンは首を横に振った。けれど、それ以上は何も言わない。

焦ることはない。――ゆっくり距離を詰めればいい。

ケビンが再び車に乗り込み、走り去っていくのを見届けてから、渡辺美咲はようやく息を吐いた。

今日は病院へ正式に赴任の手続きをする日ではない。だから彼女は、あらかじめホテルを取っていた。

ケビンの気配が完全に遠のいたのを確かめ、スーツケースを引いてホテルへ向かう。

道中は驚くほど順調だった。

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