第75章 置物

「おじいちゃん、もうやめてくれない?」

田中康介には、会場中の視線がこちらへ集まっているのが痛いほど分かった。探るような視線にさらされ、背中がむず痒くなる。

康介の眉間ににじんだ諦めを見て、おじいちゃんはふん、と荒く鼻を鳴らし、ぷいと顔を背けた。もう相手にしない、という態度だ。

それを合図にしたように、周囲の視線もさっと散っていく。

面白いものは少し眺めるくらいがいい。見すぎれば目をつけられる。余計な厄介事に巻き込まれてからでは遅い――そんな空気が、この場にはある。

渡辺莉々は、康介が取りつく島もなくあしらわれたのを見て、胸の奥がざわついた。

もちろん分かっている。おじいちゃんは...

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