第80章 絶縁状

「何の用?」

 渡辺美咲は反射的に聞き返した。

 だが、受話器の向こうの母は「帰ってきたら分かるわ」とそれだけ言い残し、一方的に通話を切った。拒む隙すら与えない。

 美咲はスマホの画面を見つめ、鼻で笑う。

 ――だいたい、察しはついている。

 昨夜、渡辺莉々が実家で田中爺さんに皆の前で平手打ちを食らった。あれで黙っているはずがない。帰った途端、泣きついて大騒ぎしたに決まっている。

 なぜ分かるのか。

 田中康介の正式な妻である彼女に、こっそり取り入ろうとする人間はいる。昨夜の一件も、わざわざ短信で知らせてきた者がいた。

 だから美咲は確信していた。母の電話は、文句を言うための...

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