第88章 似たような場面

「聞き取れなかった。もう一回言って?」

渡辺美咲はこほんと咳払いしたが、声に滲んだ笑いはどうしても隠せない。

「だからさ。俺たち父子を、若いうちから未亡人にする気かって」

二度言った。三度目を口にした田中康介は、急に鍛えられたみたいに図太くなっていて、厚かましいほど表情ひとつ変えなかった。

さっきほど面白くない。渡辺美咲はふん、と鼻を鳴らし――それでも少しだけ柔らいで、小さく息を吐いた。

「でも……ほんとに食欲ないの」

「じゃあ、俺も一緒に食べる?」

他にいい手が思いつかず、田中康介はその場でしばらく唸った末、ようやく絞り出す。

「ほんと?」

自分の淡い食事に付き合うと言わ...

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