第012章

九条蓮の瞳は暗く沈み、微かな怒りを滲ませていた。

詩織は顔を上げ、その視線を真っ直ぐに受け止める。

彼の怒りの正体は分かっていた。事態が自分の統制から外れたことに対する苛立ちだ。かつて、彼女のすべては彼の手の中にあった。それが突然——。

「源氏とは、何の関係もありません」詩織の声音は凪いでいた。「礼に誘われたんです。今夜はチャリティーオークションだからと、招待状を手に入れた彼女に声をかけられて、それで来ただけ」

眉間を寄せる九条蓮。

「礼? 須藤礼のことか?」

「ええ」

彼は押し黙った。その答えを頭の中で咀嚼しているかのようだ。詩織は急かすことなく、ただ静かに待った。視線は彼の...

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